永い抱擁

「喉…渇いてて…零が渡してくれた、から…飲みました」

言葉に詰まりながらも言う。
血液錠剤飲んだこと今更ながら罪悪感が沸き起こる。
おにいさまは頑なに私が血液錠剤を飲用するのを拒んでたから。
よくない顔をしてたから飲まなかったのに…

「ごめんなさい」
「僕は謝罪の言葉が欲しいんじゃない」

“分かるよね?僕が求める答えが何か”

優しげな笑みを向けられ回答を促されるけど、正解なんて私に分かるのかな。
ううん、分からなくても私がしなければならないことなんてひとつ。

「もう血液錠剤は飲みません…。離れて気付かされました」

離れれば離れるほどに、おにいさまが恋しくて強く求めてしまった自分。
たとえ兄妹だとしても人間社会では許されない想いでも
私が愛しているのは、枢おにいさま貴方です。

「それで優姫はどうしたい?」

こんな私なんて、おにいさまは嫌いになると思うけど
“ヴァンパイアとしておにいさまと共に生きたい”

「枢おにいさまが好き…愛してるんです」
「良いよ、おいで?優姫」

僕も君のこと愛しているよ。
天変地異が起きようと優姫を嫌いになるなんてない。
10年、人間になってしまった君を
それでも見守り愛してたのが何よりの証拠だろう?

どれくらいの深い愛情と広い心を持ってすれば、そんな風になれるのですか。
私は、もし反対の立場だったら果たしてそんな思いをずっと抱けただろうか。
出来ないかもしれないのに…

「君だからだよ。僕が想う人は“優姫”だけだから」

愛しい愛しい優姫。

「おにいさまっ…」

ここが店内で周りの目があるから何て考えずに、
私はおにいさまの腕の中に飛び込む。
拒否されることなく背中に回された手と、ぬくもりに触れ涙を流した。

「ただいま、おにいさま」
「うん。おかえり、優姫。待ってたよ。今度また逃げ出したなら…」

僕は気が狂ってこの世界の君以外のものを
ありとあらゆるまで壊しつくすかもしれない。

「大丈夫です。もう逃げたりしません」

もしまた逃げ出すようなことがあったなら、
そんな弱い私を貴方の手で終わらせてください。


*****


いつの間にか私とおにいさま以外は店内に誰もいなかった。
ひとしきり涙を流しながら抱擁し互いのぬくもりを確かめあったあと、
そっと顔をあげて腕の中から出る。

「帰ろう。僕たちの居るべき場所へ」
「はい、おにいさま」

店を後にし、空を見上げれば綺麗な月に寄り添うように星が煌めいていた。
私の帰る場所はひとつ。
貴方がいる場所――

もう、迷わない。


☆おまけ☆

「帰ったら僕の血をあげるから飲んで。渇いているだろう?」
「はい。でもおにいさま?おにいさまも私の飲んでくださいね」
「そうだね」


互いの血で満たそう。
この飢えた心に愛と言う名前の癒しを…――


*end*