視線にわたしは耐えられない

話せると思った。
だけど、いざ貴方を前にすれば思うように言葉が出てこない。

「優姫」
「……っ」

そんな私を見ておにいさまは溜め息を吐く。きっと呆れてるよね。
捨てられても、別段おかしくない。私はそれだけのことをしてしまったのだから。

「話せない?」
「それは、その…」

ただ、どうしたら良いのか分からなくて逃げだした…
そう言えばいい。 本当のことだから。
私は何を戸惑う必要があるの。 言うって決めたんでしょ。

「ごめんなさい…おにいさまは何も悪くないの。悪いのは私だから」

すべてから逃げだそうとした。
貴方のそばに居たいと言葉にして伝えたのに…

ギュッと膝の上で握りしめたままの手のひらが、汗ばむ。
おにいさまの眼差しを受ける事が耐えられず、視線を下へ反らした。

だから私には、おにいさまがどんな表情をしてるのか分からない。
長くも短い沈黙の時間が早く終わって欲しいと願いながら、下を向いたまま。

「優姫、顔をあげて」

どれくらい時間が経っただろうか。
おにいさまから声がかかる。
でも顔を横にフルフル振って拒否してしまった。

どんな顔をしておにいさまと向き合えばいいの?
それに今の私はきっと涙目になっているから、そんな顔おにいさまには見せられない。
おにいさまを余計に困らせてしまう。

「やっ……」
「優、姫…」

おにいさまの手が私に触れようとした時、条件反射のように咄嗟に弾き返してしまう。
と同時にポケットから零に貰った血液錠剤のケースが、
カツンと音を立てて落ちた。

「あっ…」

弾かれた手を一旦は戻したおにいさまだけど、
私が血液錠剤のケースを拾うより前に拾い上げられてしまう。

「僕は血液錠剤を君に与えて無かったはずだけど…どうして持っているのかな」
「……」
「錐生くんにでも貰った?」

コクン。
頷くのが精一杯だった。

「そう。でも優姫?僕は血液錠剤飲んで欲しくないな。どうして飲んだの」

問うけど答えなんて私が言わなくても分かってるはずなのに…
おにいさまは私から言わせようとしている。何故?真意が分からない。


next...