猶予はあとどれくらい
先を行くおにいさまの後をゆっくりと追うように歩く。
拘束は解かれているから逃げようと思えばいつだって簡単に逃げられる。
なのに私は、それをしない。
おにいさまもきっと逃げないと分かっているからこそ放してくれたのだと思う。
一歩一歩と歩くたびに縮まって行くのは、私に与えられた猶予の時間。
たった数日と言う短い間だったけれど、考える時間はあった。
まだ私の心は完全には定まってない。
未だに不安定な場所でゆらゆらと漂っている。
それでも誰よりも一番に私が求め焦がれ強く望むのは他ならないあなただけ。
いつだって貴方以上に想うひとはいなかったもの。
でもそれを否定したのは人間だった“優姫”の感情。
ヴァンパイアなら何ら問題も無いと言うそれを否定し拒んだ。
『おにいさまの血が欲しい』
抗っておきながら、ヴァンパイアの“優姫”が求めるのはおにいさまへの想い。
ただの家族と言う想いだけではとどまらない愛しいひとを求める感情。
「優姫」
「…………あ」
気がつけば、いつの間にか目的地に着いていたらしく声をかけられるまで分からなかった。
促され入ったのは小さな喫茶店。
こんなところで話なんて出来るのだろうか。
だって話すべき事柄は人間に聞かれてしまったら問題があるものだ。
そんなことを思っていたのが分かったのだろうおにいさまが口を開く。
「ここには人間はいないから心配しなくてもいいよ」
聞いた話によれば、この喫茶店は玖蘭家に縁のある人物が経営する店らしく、
ヴァンパイアしか近寄らないらしい。
店内に足を踏み入れれば確かにそこはヴァンパイアの気配のみ。
人間が居る気配はしない。
おにいさまが仰ったように心配は無用なのだろう。
人間がいないのならば、話すことが出来るはず。
そう思って案内された席に座っておにいさまと向かい合った。
「さて、優姫?聞かせてくれるね」
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