探さないで下さい会いにいくから

ここ数日の間で、自分の身に起きた出来事と周りの環境を
呆然となりながらも、何とか受け入れた……はずだった。
けれど、気持ちは未だに受け入れることを拒むかのように渦巻いていて…
自分が純血のヴァンパイアで、おにいさまと許嫁同士だとか…
何より許せなかったのは血を求めてしまう自分。
ヴァンパイアなんだから血を啜るのは当たり前と
説き伏せられたとしても人間だった頃の私が認めたくないと訴える。
血を啜るなんて、人間のすることじゃない…
許されざる行為…禁忌だと。

どうしたら良いのか分からなくなって逃げ出した。
行き先なんて決まってない。 ただ、アテもなく…
どこでもいい……貴方の手の届かない場所へ行きたかった――

直接伝えるのは怖いし何より貴方は許してくださらないだろうから置き手紙に想いを綴った。
伝えたかった気持ちを綴ったのは、ほんの少しだけ。
後は怖くて書けるに書けなくて曖昧に誤魔化して…。

探さないで下さい
この気持ちに整理がついたら私の方から出向きます…。
だから、今は今だけは逃げることを…猶予の時間を私に下さい。
ごめんなさい。そして、さようなら…おにいさま。


*****


夕闇色に染まる街中を人の中に紛れて歩く。
この景色…暫くは見れそうにないから、しっかりと記憶に刻むように。
再びこの景色を見ることが出来るのは何ヶ月…いや、何年後になるのかな。
でも変わらないままであって欲しい…。
それは…景色だけに対するものか。
はたまたおにいさまに対する恋心も変わらずにあって欲しいと言うわがままか。

『愛してます』

私は、口に出てしまいそうな言葉をぐっと飲み込んだ。
今の私は、貴方にそれを伝える度胸も資格も有りはしないから。


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