ずぶ濡れの猫抱きしめて

その日、私はおにいさまに内緒で外出をした。
また心配なさってるかも…って思ったけど、すぐ終わると思ってたの。

本当よ、おにいさま…。
と、月の寮の扉の真横に立って不機嫌そうな枢に向かってそう言う。

「そう…だけどね、優姫。黙って出掛けた方が心配するんだよ…?」
「ごめん…なさい。次からは、ちゃんとおにいさまに言ってから出掛けるから…」
「うん。いい子だね。それで、それはどうしたんだい?」

素直に謝れば、優しく頭を撫でてくれた枢おにいさまだったが、
視線は私から私の腕の中で濡れたまま寝ている子猫へ。

「拾ったんです…。少しの間だけでも良いから世話したいの…おにいさま、ダメですか?」
「はぁ……少しの間ね…。仕方ないか…良いよ。でも少しの間だけだから、忘れないで…優姫」
「はい。ありがとう…おにいさま」

少しの間だけと言う言葉の部分を
何故か強調して言うおにいさまに疑問を抱いてたけど、
少しだけでも子猫の世話が出来る事に私は嬉しくて、
濡れたままじゃ可哀想なので、寝ている子猫を起こさないように気をつけて、
シャワールームへ向かった。

少しの間だけど、 宜しくね、子猫ちゃん。


おまけ。

「あれ〜?枢どしたの?凄く不機嫌だね」
「一条……あの猫だけど」
「ああ、優姫ちゃんが拾った子猫?」
「そう。飼い主が見つからないんだ。どうやら捨て猫らしくてね……ねぇ、君に頼みがあるんだ」
「…………なんだい?」

一条は薄々嫌な予感がしつつも、訊ねた。

「あの猫の新しい飼い主…一刻も早く見つけてくれないかな」
「ええっ!?僕が?……わ、分かったよ、枢…何とか探してみるよ」
「頼むよ、一条」

そう言うと、枢は忌々しげに子猫を睨み付けたのだった。

(あれ…絶対、優姫ちゃんに相手にしてもらえないからだよね)


*end*