晴れない憂鬱
窓ガラスを見れば、ざぁざぁと音をたて降っている雨が視界に入る。
梅雨に入ってどれくらい経ったか分からないけど、ここ連日の雨には流石に辟易してしまう。
両親である悠と樹里は、あいにく外出しており此処には優姫と枢の二人しかいない。
優姫の存在を元老院に……ヴァンパイア界に発表してからと言うもの地下から地上――
窓のある部屋に出て来れるようになってからは当然ながら
地下室にいた頃より増して生き生きしているように思える。
だが、連日の雨で、その生き生きした姿に若干の翳りがあるが。
「おにいさま…雨止まないかな」
「そうだね…もうじき止むよ、優姫」
枢は、ソファーに座ったまま優姫に優しく微笑みかけた。
手招きすれば優姫は窓枠から離れて、枢の居るソファーまで
トテトテと可愛らしく歩いてきて枢に抱きつく。
「ほんと?」
「うん。僕が優姫に嘘をついたことある?」
汚れのない優姫の瞳が、
枢を映す。
「ううん。おにいさまは嘘言わないもの」
願わくは、ずっと汚れのないままでいて欲しい。
優姫に汚れは似つかわしくないから。
「おにいさま?」
「何でもないよ。ほら、優姫。雨が上がったみたいだ」
と、優姫の視線を外へと促せば、先程の雨は何処へやら雨を弾く光の粒が見え
そして空には――…
「おにいさま、虹が出てる」
「もっと近くで見てみるかい?」
問えば、うん≠ニ元気よく頷く優姫の手を取りソファーから降りると
枢は優姫を引き連れリビングの扉を開く。
優姫と一緒に虹を見るために。
少し前までは、一緒に外の景色を見ることさえ叶わなかった。
こうして外の世界に優姫を連れ立って出れるのは嬉しいが、
ときたま複雑な心境になるのも否めない。
外の世界を知れば知るほど優姫が自分の腕の中から羽ばたいて
知らない所へ行ってしまうような気がしてならないんだ。
自由を知った小鳥は
大空で舞う事を望むだろう?
空は晴れて虹を描いているものの、反対に枢の心は晴れ晴れとしなかった。
僕の腕の中から小鳥が羽ばたいて行ってしまった時、僕は果たしてどうするだろう…
笑顔で送り出せるくらい
心は広くないんだ。
殊更、君に関してはね。
だったら、小鳥が自由を求めて飛び立っても自分の元へ必ず帰るよう仕向ければいい…
僕にとっての世界が君だけであるように、君にとっての世界も僕であって欲しいんだ。
*end*