鬼ごっこの結末
パタパタ…
軽い足音と共に、
息の上がった声が聞こえる。
「優姫…何で逃げるのかな?」
「センパイが追いかけてくるからです!」
もちろん、息の上がった声を発しながら逃げるのは優姫。
対する枢は、呼吸ひとつ乱さず優姫を追いかけている。
何故、こんなことをしてるかと言うと
先日、理事長の書いた『優姫観察日記 学園生活編 思い出の写真つき』が発端。
あの時、ヤバめなページは破いて零に処分して貰ったのだけど…
理事長…何で…日記のコピーなんてしてるのよ…
そう…
処分して一安心していたのに、有ろう事か、もう一冊内容が全く同じ日記を理事長が隠し持っており、
それが最悪なことに枢の手に渡り、優姫は慌ててそれを持って逃亡。
枢は優姫を追いかけてると言う訳だ。
だけど枢センパイ…走ってさえ無いのに、どうして追い付かれてるのだろう…。
怖くて後ろ振り向けないよ……
しかし、枢から簡単に逃げられるはずもなく目の前には絶望に貶めるかのように壁。
つまり、行き止まり。
トサッ
「きゃっ…」
「捕まえた…もう逃げられないよ」
近付く枢の顔に優姫は先日も似たような事になったようなと顔が引き攣る。
「優姫…その日記返してもらうよ」
「あ、や……だめ……っ!」
するり
手の中から日記の感触が無くなり、見上げれば枢の手に発端となった日記が、おさめられていた。
「枢センパイっ!」
慌てて、それでも日記を再び奪い返そうと優姫は手を伸ばそうとするが、
如何せん身長差が有りすぎる為、届かない。
おまけに、日記を更に上へと掲げられてしまえば、飛び跳ねようと
全くかする事すらなく虚しく優姫の手が空を切る。
「ねぇ…優姫」
「な、何でしょうか……?」
「そんなに見られると困る内容なの?」
「は…………はい」
「そう……なら、一緒に見ようか?」
「ぇ、ええっ!?」
「優姫も見るんだから困らないよね?」
「いえ……そういう意味では……」
貴方には何があっても見られたら困るんで、見せられないんです!
と言っても最早枢が自分の言葉を聞いてくれるはずもなく、手を引かれ
気がつけばいつの間にか部屋に戻っていて、
ソファーで枢の隣に肩を抱かれたまま日記を見ている状況。
ぱらり…
枢の指が、問題のページを捲る…
「センパイ!だめ……ひゃあっ」
制止しようとした優姫の手を
枢が押さえ込む。
優姫は手の甲をぺろりと舐められ反射的に手を引っ込めれば、もう抵抗する術は残されておらず、
目の前に理事長の記した…件の話がこれまたご丁寧に書かれていた。
その瞬間、優姫は消えてしまいたいと思ったのは言うまでもなく、
枢からはブリザード級の黒いオーラが発せられたのも言うまでもないこと。
「か、か……枢センパイ……あ、ああ…あの……えーと……」
「優姫…寝室に行こうか。ゆっくり話し合おうね?」
「…………………………はぃ」
翌夕、妙に機嫌のよい寮長と、
反対にゲッソリとし、まるで生気を吸いとられたような顔の優姫の姿が見られたとか。
また、あの日記が、その後どうなったか枢以外知らない。
すべて闇の中…―――
*end*