「別に初めてじゃないですよ?」
視線が絡まり、自然と合わさる唇。優姫の桜色の甘い唇を堪能する。
どこまでも甘く僕を惑わす味。
舌と舌を絡めれば、それに応えようと必死になる君に笑みが浮かぶ。
僕のことを求めるかのように服を掴む君の指に力がこめられる。
「……はっ……せんぱっ……」
「クス…初めてなのに刺激が強かったかな」
唇を離すと同時にカクリと頽れる優姫の腰に腕をやって支えれば…
「別に初めてじゃないですよ?」
と、優姫は顔を紅く染めながら良い放つ。
その一言で暗雲が立ち込めるのも至極当然であって。
「か、か…枢センパイ!?」
ビクリと肩が震えた優姫に、何とか黒い空気をおさえつつ問いかけるのは
君の唇を奪ったであろう相手が誰かと言うこと。
「誰としたの」
許せない。僕の優姫に…
死よりも残酷な目にあわせ償ってもらおう
「ぜ…零…」
「そう…錐生君がね」
「センパイ!?」
ああ、許せないね。
優姫の血を貪るだけに飽きたらず、その唇すらも…―――
どうやって償わせようか。
優姫から視線を僅かに外し、気配を探れば近くにいることが分かる。
「優姫。少し僕は席を外すよ。5分で終わるから此処で待っててくれるかな」
「は、はい…」
「ごめんね。すぐ戻るよ」
了承をとってから優姫の側をはなれ、向かう先は決まりきった場所。
どうやら分からせてあげなければならないようだ。
君は優姫の盾なのに…。盾なら盾らしく振る舞わないといけないよね?
*****
「―――っていう夢を最近よく見るんだ」
「そ…そうなんですか」
玖蘭邸。
現在、朝方。
そろそろヴァンパイアは眠らなければならない時間帯。
なのに、帰宅したおにいさまが部屋に突然押し掛けてきて
ベッドに縫い付けられた状態でそんな話をするのを聞く私。
まったくもっておにいさまが何を仰りたいのか分からない。
「おにいさま…?」
「優姫。まさかとは思うけれど錐生君とキスしたの?」
「……そ、それは」
無いです≠ニは言えない。零と別れる前にキスされたのだから。
たとえ私が求めたキスで無くとも、キスされたのは事実。
今更無かったことにも出来ない。
「答えられないってことは肯定だととっていいの?初めても錐生君とキスしたんだね、優姫は…」
「え…あ、の」
「許せないな」
否とも是とも最後まで紡がせてもらえないまま、優姫は降ってきたキスを受け入れた。
「んっ……ぁ……はっ……」
何度も角度を変えて行われるそれに優姫はただ身を任すしかなく、
霞んでいく思考のなかで今更なことを思う。
おにいさまは嫉妬深い≠フだと。
*end*