獣が残した所有印
窓ガラスに浮かぶ、自身の姿を見ながら
優姫はソッと肌に数え切れない程つけられた紅い印を指で撫でた。
ヴァンパイアはヒトより身体能力や知性に秀で、容姿端麗、怪我も治りが早い。
殊更、純血種は特に。
だが、この肌に数え切れないくらい付けられた所有印は消える事はない。
いや、消えるより早く新しく付けられる…と言った方が正しいかもしれない。
誰がつけた何て言わなくても分かる。
こういう事を優姫に出来る者と言えば、
兄であり婚約者でもある枢を置いて他に居ないのだから。
そもそも、純血種である優姫に容易く手出し出来ないだろう。
たとえ手出ししようものなら、我が身が無事ではすまなくなるかもしれない。
「何を見てるの?優姫」
「……んっ……外の景色を…………やっ……枢……おにいさま」
フワリと枢の香りと共に優姫は背後から抱きしめられた。
そして、肌を滑る濡れた舌の感触に思わず身動ぐ。
「……ぁっ……おにいさま……跡、つけ過ぎ……他の人に見えちゃ…う」
「見せれば良いよ。優姫が僕のモノだと分かり手出ししなくなるから」
「………でも、恥ずかしいの」
「もっと恥ずかしいこと、してるだろう?今更だよ」
と、優美な指先が明らかに意図を持って優姫の服の裾から中に入る。
素肌に触れる指の感触に情事の時を嫌でも思い出してしまい
頬を林檎のように紅く染め上げた。
「僕に嘘をつく子にはお仕置きしなきゃね?
……お仕置き嫌なら何を見てたか、僕にちゃんと言ってごらん?」
そう。景色なんて見てない。
でも、優姫には何を見てたのか言うには恥ずかしくて思わず隠しただけ。
もちろん、枢には優姫が何を見てたかなんて分かる。
分かっておきながら、わざと優姫の口から言わそうとするのだ。
「……んんっ」
「そう……言わないんだ?悪い子だね」
ふわっと抱上げられた身体は、お姫様抱っこされて下ろされたのはベッド。
枢のダークレッドの瞳は、いつの間にかヴァンパイアの紅い瞳に変わっていた。
優姫は、抵抗もそこそこに枢の後頭部に両腕を回し、吸血行為を受け入れる。
ブツ……
肌を牙が裂き、枢が血を啜る音が耳に聞こえた。
「優姫…愛しているよ」
血を啜った枢が首筋から顔を上げる。
「……あ……おにいさま……」
その妖艶な姿に、この後どうなるか何を枢が望んでるか言わなくても優姫には分かった。
それに、所有印が消える事がないことも。
所有印。
貴方に愛されてる証。
私が貴方のモノだと言う証。
だけどね……少し自制して下さい…おにいさま…。
*end*