手を繋いで

「優姫…おいで」
「はい…おにいさま」

差し伸ばされた手に優姫は戸惑うことなく手を重ねた。
それは10年前の冬の雪の日の出来事を彷彿とさせる。
あの頃とは違う…。だって今の私は10年より前の記憶がある。
何も知らずに生きてた10年間。

それがおとうさまとおかあさま、おにいさまの望みだったと仰有るけれど、私は納得出来ない。
おかあさまは私の記憶とヴァンパイアの因子を封印する代償に身を犠牲にし、
おとうさまは悪いひと達から守ると言って地上に出て散ってしまった。
そして何もかも忘れた私は、理事長に引き取られたけど、おにいさまは独り…。
幼い頃から、ずっと一緒に居ようって決めてたのに…。

そう思うと繋がれた手にギュッと力が籠ってしまう。
必然的に繋いでいるおにいさまにも、それは伝わってしまって…

「……優姫?」
「……っ……あ…ごめん…なさい。何でもないです」
「そう…」

何でもない…って言ったけど、きっと気付かれているだろう。
でも説明なんて出来ない。
悲しませたくないから…。

「おにいさま…私…」
「優姫…良いよ…君の気持ちは分かっている…」
「……おにいさまは優しすぎます」
「違うよ、優姫。優しいのは僕より君だ」

悲しそうに微笑む姿に、 罪悪感が芽生える。

あの時と同じ…。
零を助けたかった私は 血を分け与えた…
償えるはずもない罪を犯した。
あの時、知らないふりを通して下さったけど、知っていたのでしょう?

私が零に何をしたのか…。


ああ……私は、おにいさまを悲しませてばかり…
犯した罪は、もう償うことは出来ないけれど、
償えない罪があるならおにいさま…貴方と共に私も堕ちて行けば良い…

ね?

【だから、おにいさま…私を汚して…】

貴方の手で…。

おにいさまと一緒なら、 どこまででもいい。
私の居場所は、おにいさまの隣以外にないから。
おにいさまの手は優しい手。
私を守ってくれて、その温もりが私を唯一安心させてくれる…―――
私は、その温もりを手放すことは出来ない。恐らく、ずっと…―――
でも、それで良いの。私のおにいさまだから……。


*end*