囁き

おにいさまの言葉は、甘く私を誘惑する…――

『優姫…』

ただ、名前を呼ばれただけなのに心臓がドクンと跳ねて…。
平静でいられない…。

『優姫、愛しているよ』
『君は僕のただ一人の大切な子なんだ』
『優姫の気持ちを聞かせて?』

ほら、また。
ドクン。
鼓動が速く脈打つ。
おにいさまの囁きに、私は答えなきゃと思いながらも中々答えられない。
頬は、きっとこれ以上ないくらい紅く染まっているはず

「優姫…どうして答えてくれないの?」
「………っ」

不思議そうにダークレッドの瞳を向けるおにいさま。
だけど、本当は 分かっているのでしょう?
分かっていて気付かないフリをするのでしょう?
それは、私がおにいさまの望む言葉を紡ぐまで続けられる。

「……か、枢おにいさま…」
「ほら、言ってごらん…優姫」

おにいさまが私の耳元で囁く。
吐息を耳元で感じて、 優姫はビクッと身体を強張らせる。
そうすれば、枢は悪戯っぽくクスッと笑って優姫に続きを促して…―――

「私も……おにいさまが……大好き……です」
「愛してくれてる?」
「………………っ」

大好きと言えば、貴方はその言葉に不満を持つ。

僕が望む言葉は【大好き】じゃないよ?

そう、告げている。

「ん?優姫?」
「…………………………」

「優姫」

無言を貫こうとした優姫に枢の静かな…拒否を許さない言葉が降り注ぐ。
ああ、どうしてだろう。
私は、貴方には敵わない…

「愛して…います……おにいさま」
「クスッ…やっと言ってくれたね。出来れば枢≠チて…呼び捨てで呼んで欲しいけれど」
「む、無理です」
「…そう…。だけど時間は沢山あるから焦る必要は無いよね」

暗に覚悟してて?
と、告げる枢。

私は、いつかおにいさまのことを"枢"と呼び捨てで呼ぶ日が訪れる。
兄妹の枠を越えた…夫婦として――
貴方の妻としておにいさまに向けた特別な呼び名を…貴方の隣で紡ぐ日が…――


*end*