妬いてる?

それは夜会での出来事。
純血の吸血鬼―――おにいさまの妹且つ婚約者としての…初めての夜会。
先程から、周囲から感じる視線が痛い。純血種である以上、慣れなければならないとは分かっているけれど。

思い出した過去。
そして自分の存在。
"今までのように人間と同じようには生きられない"
あの時の言葉が何を意味するか分からないはずもなく…
私は吸血鬼として、吸血鬼世界でおにいさまと共に生きる道を選んだ。
僅かながら後悔が無いわけでは無いけれど、それでも私の生きる場所は…おにいさまの隣だと思うから。

「……優姫」

振り返ってみれば、 大好きなおにいさまの姿。

「おにいさま」
「おいで。そろそろ帰る時間だよ」
「あ…はい」

そう言われて初めて夜会が始まってから、時間が経過してるのだと気付く。
始まったばかりの頃は、早く終わらないかなと思っていたのに今は名残惜しくも感じてしまう。

「僕と居るより楽しかったみたいだね」
「え…そ、そんなことは無いです…よ」
「本当?じゃあ、どうして僕の傍を離れたのかな?」

言ったよね?
僕の傍を離れたらだめだよ…と。

「えっと……それは、その…」

美味しそうな料理に、ついフラフラとなりました……なんて言えない…。
うーん、うーん唸る優姫の頬に枢の手が触れる。

「悲しいな…優姫は僕と一緒に居るの嫌だった?」
「違います…ただ…その…」

このまま言わないままだと、枢の機嫌が悪くなるかもしれないと思った優姫は素直に白状する事にした。

「料理…美味しそう……だったから…ごめんなさい…」
「仕方のない子だね」

帰ったら、お仕置きだよ…と耳元で囁かれる。
僕より食べ物をとるなんて許せないよ…優姫の心を占めるのは僕でありたい。
たとえ食べ物と言えど…許せないものは許せないんだよ。

「……おにいさま」

もしかして妬きもちですか?
問いたいのは、山々。けれど、慌てて開きかけた口を閉ざす。
きっと言ってしまったらおにいさまの機嫌が更に悪くなると思うの。

「……優姫?」

どうしたの?と問われるけど、私が思っていた事なんてお見通しのはず。
だって、そうじゃなければ…微笑んでいると言うのに何処か怖いなんてあり得ないでしょう?
言わなくてもこんな状況なら、言ってしまえば更に悪くなるのは見えている。

「えっと……おにいさま…私は、おにいさまのお傍に居ますから……好き…です」
「そう…嬉しいな、優姫。だけど、帰ったらお仕置きはするよ」


覚悟して…と言う言葉と共に手を引かれれば歩かざるを得なくて…
でも内心、妬きもちをやいてくれて嬉しかったりもする。
それが食べ物相手だとしても。
私ばかり、いつも妬きもちやいてたんです…たまには妬きもちやいてもらっても良いですよね?おにいさま。


おまけ

「おにいさま、あれが食べ物じゃなく男の人とでも妬きもちやいてくれましたか?」
「優姫…僕を困らせたいのかな…」

困った子だ…と、おにいさまは言う。

優姫。僕以外の人と話してる所を見たら…許せないよ。
錐生くんの件ですら、いつも許せないほど嫉妬していたんだよ…君は知らないだろうけど…。


*end*