You who is dearer than anyone

10年―――

優姫は母である樹里の術式によって、ヴァンパイアの因子を眠らされ、記憶を失って人間へとなっていた。

ただ、見守るだけでいい。
君が人間として幸せで過ごせるならば。
ヴァンパイアの世界は血塗られた世界だから。

そう思っていたのに、君が錐生君と一緒にいる姿を見る度に、胸が痛んだ。
錐生君に向けて笑わないで。
錐生君を生かすためとは言え、君が血を捧げるようなことしないで。
優姫の隣に居られない自分がひどく嫌に思えた。

それからほどなくして物語は、僕の思っていた通りに進んだ。

緋桜閑の死
玖蘭李土の復活

そして僕は、樹里が命と引きかえに君に施された術式を解いて、
再びヴァンパイアの身に戻してしまった。
他に優姫を助ける方法が無かったから。

純血のヴァンパイアに戻った優姫を李土は狙う。
もちろん、対抗するための駒は作り出してある。
何よりも優姫の側にいて、何よりも優姫に頼られていて、
そして何よりも僕の一番大切な子の血をあろうことか貪っている彼。
彼は優姫を裏切らないと分かっていたからだけど。
結果、僕のシナリオ通りに進み、優姫と錐生君は袂を分かつ。

僕は、優姫を連れて黒主学園を去った。
君のために作った箱庭を…――――。

僕たちが身を置いたのは以前、記憶を失う前に
両親たちと一緒に暮らしていた玖蘭の屋敷。
外は僕が壊滅させた元老院の統制を失って
危険なヴァンパイアが彷徨いている。
そんな危険な中に優姫をむざむざと出すわけには行かない。
優姫も…僕のとった処置に異論は唱えなかった。

ごめんね…優姫。
君を自由にしてあげられなくて。
でも、もうすぐ…もうすぐだから。
新しい統制のもとに、新しくなった協会と会合を持つことになった。
すべては優姫を外の世界へ出してあげるために。

「おにいさま…私は、おにいさまが好きです。
ヴァンパイアに戻ったことも後悔してませんし…だから悔やまないで」

むしろ謝らなければならないのは自分だと優姫は言う。
そう…
君の心には、僕と錐生君がいる。
屋敷に戻ってすぐの頃、君の血を啜った頃から…分かっていた。
優姫の血は僕と錐生君を求める味がしていたからね。
でも、優姫……
僕は君を放してあげられないんだ。
ヴァンパイアは執着心が強いから…

「そんなこと言ったら、優姫のこと本当に死ぬまで放さないよ?」

僕が君を殺すか
君が僕を殺さない限り――ね。

「いいんです……おにいさま」

笑いながら紡ぐ君の唇に僕は、そっと口付けを落とした。

僕も君を愛しているよ――


You who is dearer than anyone.


*end*