レベル:E
震える身体を抱きしめる。
目の前には、レベル:Eへと堕ちてしまった元人間のヴァンパイア。
理性を喪い本能のまま血を貪る…獰猛な獣の姿。
「血ヲ…血ヲ…」
レベル:Eへと堕ちたヴァンパイアは血を求め、優姫へと向かうが…突如として立ち止まり怯える。
それは、優姫から感じたのが…純血種の気配だからだ。
たとえレベル:Eに堕ちた、理性を喪った身であろうと純血種に手出しするには、戸惑うのだろうか。
「ア…アアッ…」
「ごめんなさい……貴方が悪い訳じゃないけど…このままにして置けないの」
優姫の瞳が紅く輝き、風の刃がレベル:Eを切り裂く。
次の瞬間には、レベル:Eだったヴァンパイアの灰だけが残っていた。
――どうか、来世では幸せになって…
「優姫っ!」
「おにいさま…」
珍しく慌てて駆けてくる枢の姿を視界にとらえた優姫は、声のする方へ振り向く。
ふわりと香るおにいさまのかおり。
と、同時に抱きしめられていて。
枢は優姫を抱きしめながら、ちらりと視線を傍らの灰に向け…
「怪我は無い?ごめんね、僕が一緒に居なかったせいだね」
辛かっただろう?と言う枢に優姫は大丈夫です…と返す。
「私がおにいさまの傍を離れたのが悪いんです。それに…」
レベル:Eのヴァンパイアに始末をつけるのは、貴族階級以上のヴァンパイアの義務なのでしょう?
終わらせてあげる事で、忌まわしき呪縛から解き放たれるのならば…
心苦しいけど何をすべきか分かってる…
「それでも優姫が手を下す必要は無いんだよ…君は…」
君が哀しむ姿を見るのは僕とて辛い…
優姫…君は自分を汚してと言っていたけど、汚れて欲しくない。
優姫は…いつまでも綺麗なままで居て欲しい…
僕の我が儘だとしても…。
「あのー…枢様……いちゃつくの帰ってからにしてくれませんか?」
不意にかけられた第三者の声。
視線をやれば、そこには顔を赤らめ、居心地悪そうな藍堂の姿。
「え!?藍堂センパイ!?やだ…ちょっと…おにいさま、離して下さいっ」
「……分かったよ」
渋々ながら枢は優姫を離し、車がある場所まで優姫を促す。
ただ、藍堂とすれ違い様…
「あーいーどーうー…学園に帰ったら、僕の部屋に来るんだよ?」
「っ!?」
「いいね?」
「は、はい…枢様」
それは言わずもがな邪魔されたから、腹いせに仕置きと言う事で…。
藍堂は真っ青な顔になるが、言った張本人は既に優姫を引き連れ、視界にはとらえられない。
慌てて後を追う藍堂の心境は枢と話せる事の嬉しさと仕置きの恐怖の狭間で揺れる実に複雑なものだった。
*end*