LETTER

貴方は今どこで何をしているのですか?
何を想って生きていますか?
生きていて幸せだと思うことは有りますか?
あれから一年過ぎたね…
私達は、もう一緒に同じ時間を生きることは叶わないけど…
忘れた事なんて片時も無いんだよ。


*****


「はぁ…バカみたい…」

呟きながら、優姫は手紙を書く手を止めた。
決して届く事のない手紙を、懲りずに何度も書く私は愚かだよね――

あの人と…おにいさまと共に同じ時間を生きていくと決めたのに、
私の心の中には、もう一つの存在がある。
忘れなきゃ…忘れなきゃならないと思って居るのに…
だって忘れなきゃ枢おにいさまを悲しませるから。

ねぇ…零…
私達は、出会ってなかったら今頃どうなってたのかな?
私が、もしヴァンパイアの因子を封印されてなくて、純血種として零と出会ってたら、やっぱり憎む?
私がヴァンパイアではなく、人間だったら進むべき道は違ってた?

でもね…
どんな形で出会ってたとしても私は私で、零は零だよね?
だから進む道が違っても…最期まで生を全うして下さい…
いつか、零が本当に心から笑える日が来ますように…
離れていてもそれだけは願わせて…。


――――10年後―――


それから10年の月日が流れた。
私は、今でも貴方の幸せを願っています。

カタッ…
物音がして私は音がした方を振り向けば、そこには愛しいひと。

「おにいさま…」
「優姫、おにいさま≠カゃないよね……?」
「あ…えっと…枢」

月日が流れるのは早くて、私は兄であった枢と結婚して何気ない日々を過ごしている。
ただ、未だに零のことを忘れられない。
枢も気付いてるけど、何も言わないでいてくれる優しいひとに私は甘えているんだと自覚はしてる。
このままじゃ良くないって思ってるのに、何も変えられなくて…
そんな時だった…
枢からの誘いは。

「久しぶりに出かけようか、優姫」
「え…良いんですか?でも何処へ?」
「それは、着いてからのお楽しみ…と言った所かな」

冗談めかしく言う枢に私は首を傾げたけど、久しぶりの枢と二人でのお出かけに胸を弾ませた。
そして、枢に連れられ着いた場所に居たのは…―――

「ぜ……ろ?」
「優…姫」

懐かしい彼の姿に私は思わず走りだして、抱きついた。
10年ぶりに会う零は、雰囲気が違っていて、あの頃は見れなかった心からの微笑みを浮かべていた。
聞けば、零は結婚して二児の父親なんだって…。
あの零がお父さん…

「お前…いま凄く失礼なこと考えてるだろ?」
「あはは…ごめん」
「ったく…。でも、優姫…ありがとうな。お前が居たから俺は生を諦めなくてすんだ」
「うん…ね、零は、いま幸せ?」
「ああ…幸せだ」

"幸せ"
私が一番聞きたかった言葉。
零が幸せで良かった…
私も嬉しく思うよ…
そう言えば、零は黒主学園にいた頃と同じように私の髪をクシャクシャと撫でて…

「もうっ…何するのよ…髪がボサボサになっちゃったじゃない」
「はははっ…。優姫…俺は、もう大丈夫だ。だから、お前はあいつと共に生きろ…
優姫、お前も幸せになるべきだろ?」
「そうだね…零、私…幸せになる」
「ああ…」

言葉は短かったけど、ちゃんと伝わった。
それから、
少しばかり零と話して別れた。
そして私は、今まで何も言わず見守ってくれていた枢に顔を向ける。

「待たせちゃってごめんなさい。
……私は枢を愛しています。だから貴方の妻として、ずっと一緒に居ても良いですか?」
「優姫…もちろんだよ。僕は君以外と歩むつもりは無いから…」

言葉と共に、優しく抱きしめられて香るのは慣れ親しんだ枢の匂い。
今なら、本当の笑顔で伝えられる

「愛してます」

私達の幸せな時間は、
始まったばかり。


*end*