夏期休暇
明日から待ちに待った夏期休暇。
ここ、黒主学園のある場所は年間を通して気候は寒い方だから、
夏期休暇は比較的短め……。
私たち、夜間部は騒ぎ防止の意味も含めて寮を出るのは、
普通科の生徒達が出ていったあと…――つまり夕刻以降となる。
「優姫、忘れ物はない?」
「えっと……はい、大丈夫です。おにいさま」
「なら、行こうか」
ガチャリと寮の鍵をしめるおにいさま。
寮を出たのは、私とおにいさまが最後。
おにいさまは寮長だから戸締まりを責任もってしなきゃならないみたい。大変そう…。
少し歩けば、風紀委員の零の姿。
「やあ、錐生君…これ月の寮の鍵」
「わざわざどうも、玖蘭先輩」
「零!」
「……あ、ああ…お前か」
先日は、私の身体が縮んでいて…この姿で面と向かって話すのは初めて。
「零は夏期休暇…家に帰るの?」
「……少しだけな」
「そっか。じゃあ次に会えるの休暇明けだね……
零に――「優姫……錐生君の仕事の邪魔したらいけないよ。さ、帰ろう」
「……ごめんなさい。零、またね」
お土産でも買って帰って来たいんだけど、嫌いなものとかある?
って聞こうとしたが、それは言えなかった。
おにいさまに言葉を遮られてしまったから。
おにいさまに連れられて私は校門の外に停まっていた車に乗り込む。
「枢様、優姫様。お気をつけて」
「またね〜優姫ちゃん。あ、枢も」
「うん、拓ちゃん…瑠佳。ハナと暁も元気でね」
「はい!優姫様。枢様、休暇中お会いできないのが僕は…「英…余計なこと言うな」
「は?な、なんだよ」
「………」
「おにいさま?」
「いや、何でもないよ。じゃあね、一条。みんなも…。
ああ、くれぐれも問題は起こさないように…ね」
それっきりまた黙り込んでしまったおにいさまに
?マークを浮かべたけど、休暇でおとうさまとおかあさまに会えるのが嬉しくて、
私は気にしなかった。
屋敷のある場所までは黒主学園からは、離れているためか遠い。
車と地下高速鉄道を乗り継いでの帰省になる。
地下高速鉄道に乗って数十分…うとうとと眠気が襲ってきた。
昨日、嬉しくてあんまり眠れなかったのが原因だろう。
何とか必死に眠気を振り払うように眠気と格闘していれば、
今まで黙り込んでしまってたおにいさまが口を開いた。
「眠いの?優姫…寝てていいよ」
「でも、おにいさま」
「大丈夫。僕がちゃんと到着する時には起こすから」
「……はい」
その優しい言葉に私は、ついに眠気に身を任せて眠ることに。
ただ、到着間近に起こされて起きたら
何故かおにいさまの膝を枕にして寝ていた……と言う状況にパニクった私に…
「この方が寝やすいかと思ってね」
と、涼しげな表情で言うおにいさまに私は何も言えなかった。
もう慣れるしかないと諦めの気持ちをもって。
*****
地下高速鉄道を降り、また車に揺られること数十分。
漸く見えてきた慣れ親しんだ我が家。
車を降りると、荷物をもってやや早足で、そのまま屋敷の扉を開けば……
「おとうさま!おかあさま!ただいま」
「優姫。お帰りなさい」
「枢もお帰り」
「ただいま戻りました。お父様、お母様」
久しぶりの玖蘭の屋敷。
優しい両親の姿。
懐かしかい匂いも感じて、
ああやっぱり自分の生まれ育った家が一番落ち着くと思った。