枢様の優姫観察日記
〜七夕編〜
7月7日。
今日は七夕。
先週、黒主理事長が月の寮に巨大な笹を持って来たんだ。
そんなもの邪魔でしかないし、誰も見向きしないだろうから
消し去…片付けようとした時に優姫がこんな事を言った。
「わぁ!おにいさま、それ七夕の笹ですか?」
「そうだよ、優姫」
「あの!私、短冊にお願い書いて良い?」
「良いよ、優姫がそれを望むなら」
その言葉に嬉しそうに顔を綻ばせる優姫は
それはもう抱きしめて閉じ込めたくなるくらい可愛らしい。
優姫に短冊とペンを渡せば、何をお願いしようか悩む姿に
僕はクラッと来たものの、優姫の手前、醜態を晒すなんて出来ないから
いつもの笑顔を貼り付け何とか耐えた。
「おにいさまも短冊に書きません?」
「そうだね…僕もお願いしようか」
と、傍に置いてあった机の上からペンと短冊を取り紙にスラスラと書く。
もちろん僕のお願いは言うまでもなく優姫絡み。
僕が書き終えて少しすると、優姫も書き終えたらしく…
「書けたかい?」
「はい、おにいさま」
「じゃ、貸して。僕が吊るすよ」
優姫から短冊を受け取り、笹にくくりつける。
その時に見えた
優姫の可愛らしい文字で書かれた願い事は
【枢おにいさまと、ずっと一緒に居られますように】
はからずも、優姫と僕のお願い事は一緒だったようで嬉しいよ。
それはさておき、笹に短冊を吊るしてから今日七夕の日を迎えるまで、
今まで無関心を装っていた夜間部の生徒達だったんだけど、
優姫や僕が短冊に願い事を書いたのを知り、皆で競って願い事を書いたようだ。
結果、理事長の持って来た笹には、
短冊がびっしりとくくりつけられていて風が吹くと時折揺れる。
「おにいさま、願い事…叶うかな?」
「大丈夫…優姫の願いは叶うよ」
たとえ、天に届かずとも
僕が優姫の願いは、全て叶えてあげる。
優姫…これからも二人で、ずっと一緒に居よう。そう…織姫と彦星が嫉妬してしまうくらいにね…。
【ずっと一緒に居られますように】
願いは僕達が同じ気持ちで居続ける限り、違えることなく叶う…
おまけ
同じ頃、玖蘭邸にて。
枢と優姫の両親である悠と樹里もまた
短冊に願い事を書いて吊るした笹を見ていた。
その願いは
【ずっと一緒に居られますように】
「悠、愛しているわ。私、貴方と一緒になって
大切な子供達の成長を見れて嬉しい」
「樹里、僕もだよ。愛してるよ…」
そう言いながら、甘い雰囲気の中、どちらともなくキスを交わしたのだった。
更におまけ。
元老院の管理下にあるとある屋敷にて。
巨大な笹に、
びっしりの短冊。
そこに書かれている文字は、似たり寄ったりなモノばかり。
【優姫を僕のモノに出来ますように】
【邪魔者を消せますように】
【優姫と枢の婚約解消を願う】
などなど…。
しかも筆跡は、同じであるからして一人で書いた事になる。
「ふっ…優姫は僕にこそ相応しいんだ。打倒枢!見ているがいい」
と、一人虚しく(?)笑う玖蘭李土の姿があった。
余談だが、使用人達は李土が不気味過ぎて近付くのを極力避けたそうな。