枢様の優姫観察日記
〜梅雨編〜

7月△日


その日は、例年に増して朝から激しい雨が降っていた。
太陽が出ないと言う点では、僕達ヴァンパイアにとって
昼でも外出出来るから喜ばしいが、優姫は不満みたいだ。

本来ならば、まだ微睡みの中にいる時間帯――。
優姫は窓枠の近くに立ち、一向に上がらない雨を物憂げな表情で眺めている。

ああ、優姫…そんな顔をしないで。
僕まで悲しくなってしまうよ。

「おにいさま…今日は一日中ずっと雨なのかな?」
「そうだね…天気予報では明日にならないと止まないって言ってたからね」
「そうです…か…」

再び窓の外の視線をやる優姫。
物憂げな表情は変わらない。
不意に優姫が、消えてしまうんじゃないかと言う
衝動に駆られて僕は咄嗟に抱きしめた。

ふわりと香るのは、優姫がいつも好んで身に付けている
僕も慣れ親しんでいる優しい香り。
ギュッと抱きしめたままでいれば、優姫は顔を紅くしつつも
僕の腕の中で身を任してくれて…
ああ、優姫は僕を必要としてくれているんだと感じれる。

どうしてだろう…
雨の日になると不安が拭えないんだ。

いつも通りではいられなくなる。
弱い自分を優姫に見せたくないのに…
優しさにすがりたくなるんだ。

「優姫は此処にいるよ、おにいさま」

そう言って優姫は僕の腕に手を添え返した。
その温もりに僕は時間が許す限りすがっていた。