お出かけ

優しく、笑いながら、私に話かけてくるおにいさま。
今、私とおにいさまは、黒主学園の外…――とある街中を歩いていた。

何故、外出してるかと言えば、先日のパフェの件が尾を引いており、
『一条とは出かけられるのに、優姫は僕と出かけるのは嫌なの?』と
哀愁たっぷりこもった眼差しで見つめられれば、
おにいさまと一緒だと凄く目立って衆目を浴びるから嫌だなんて言えるはずもなく――

「……行きます」と言うしか無かったのだ。
おまけに手は恋人繋ぎと言うもので、はっきり言えば恥ずかしい。

「優姫、何処へ行こうか?」
「…………えーと」

にこにこした枢とは反対に、優姫は出来れば一刻も早くこの場所から立ち去りたい一心。

けれど、ここで「帰りたい」なんて言おうものなら枢の機嫌は悪くなり、
その怒りの矛先は夜間部の生徒に向かうか、周りの物に八つ当たり。
寮内の備品やら色々なものが今まで何度無惨な姿になったことかしれない。

優姫とて、薄々ながらも枢の黒いオーラには気付いているが故に…
こうして大人しく街中を、それは恋人同士のように
(実際、婚約者同士だからように≠ニ言う仮定では無いが)仲良く歩くしかないのだ。

「パフェ…食べたい…です」

かろうじて言えたのはそれだけ…――

好きなものでも食べて少し気を紛らそう。
それに、おにいさまと一緒に街中を歩けば、衆目を集めるのは致し方ない。

何より、黒主学園に居ても、人目を引くのだから――
そうだ…学園だと思えば良いんだ……
そう思ったら今までより気が幾分か楽になった。

「クス…優姫は本当にパフェが好きなんだね。いいよ、パフェを食べに行こうか」
「はい、おにいさま」