枢様の優姫観察日記
4月○日
明日は、普通科の新入生達の入寮式の日だ。
恒例行事のようなものだから仕方ないのだけど、
理事長から夜間部生を何名か夜間部の代表として親睦の夕べ…
――普通科と夜間部の親睦の為のパーティーの挨拶にやらなければならない。
一昨年は藍堂と架院だった。
去年は都合上(元老院が主催した優姫と僕の婚約について
正式にヴァンパイア界への紹介のため)、
僕達ヴァンパイアは
黒主学園に居られなかったから親睦の夕べなんて開かれなかった。
今年は問題も無いため、案の定…理事長から親睦の夕べの話を聞かされたんだ。
もちろん予想していたから、藍堂や架院に任せようとしたのだけど…
優姫が可愛らしいお願いを言ってきたんだ…
でも僕としては最初から叶えられないと思っていたよ。
「私が…行ったらダメですか?」
「え…ゆ、優姫ちゃん?」
その言葉に夜間部の生徒達は驚く。
当然だよね。
だって純血の君が親睦の夕べの…
―――夜間部を代表としての挨拶に出たいなんて言うから…。
「一応、私も夜間部の生徒だから…候補対象ですよねっ?」
「純血の君である優姫様が親睦の夕べに出向かれるなど…」
「ダメですか?」
「うーん…優姫ちゃん、その…枢に聞いてみたら、どうかな?(行かせる訳ないだろうけど)」
「分かりました。……おにいさま……私、行っても……」
良いですか?と、僕に聞こうとして振り返った優姫の言葉が途中で止まる。
一条達も同様に固まり、中には怯えた声を上げるものもいた。
ああ、いつの間にか純血種特有の力を発していたらしい。
貴族階級のヴァンパイアでは耐えきれないくらい圧倒的な力。
それでも、何とか気力を振り絞って話しかけてくる一条は
長年親友と言う立場にいたから成せる行動だろうね。
「か、かな…め…」
「…………何?」
「いや、どうしたの?……怖いよ」
「気のせいじゃないかな…」
冷や汗を流す一条達を無視して
僕は、状況が分からずオロオロした優姫の手を取り話しかけた。
「優姫が態々出向くような行事じゃないから。一条達に任せよう…?」
「……でもっ」
「優姫……僕のお願い聞いて…?それとも僕を困らせるの?」
「う……分かりました……おにいさま」
「ありがとう。……一条」
「な、何だい?」
「そういう訳だから、任せたよ」
「あ、うん……」
一条の返事を聞くと僕は優姫の手を引きながら部屋に戻って行く。
後は君達で誰が行くか決めて……と言うかのように。
クスッ…
僕がむざむざと優姫を親睦の夕べに…
普通科の生徒達の目に触れる場所に送り出すと思うかい?
答えはノーだね。
僕は、殊更君のことに関しては自制心が無くなってしまうほど独占的が強いみたいだから…。
だから、優姫……お願い。
僕をあまり心配させないで…?
でないと、何をするか分からなくなってしまうよ……?
嘘じゃない。本当だよ…